リウマチ教室 平成21年10月10日
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宇野整形外科リウマチ教室としては6年ぶり、前回は国内初認可の生物学的製剤の
発売直前に演題「リウマチ新薬のお話」で宇野先生のご講演に、新薬登場を胸躍る
思いで拝聴しました。今回は「リウマチ治療の今後と現状」と題し、新たな生物学的
製剤も含め院内治療の実績のお話に改めて生物学的製剤の効果とリウマチ治療の
進歩を実感しました。また、ステロイドや免疫抑制剤を使うリウマチ患者の対応として、
従来の接触・飛まつ感染予防(手洗い・うがい・マスク)と共に、新型・季節性インフル
エンザ、肺炎球菌に対するワクチンの有効性についてのご講演に、リウマチ患者の
備えを再確認することができました。今後も新薬が目白押しでリウマチ治療の目覚しい
進展に嬉しい限りですが、高価な薬価による医療格差の早急な改善を厚生労働省に
望みたいところです。
リウマチ教室開催に宇野先生はじめ病院スタッフの皆様方に深謝します。
澁谷 薫 |
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リウマチ教室 要旨 |
リウマチ治療の現状と今後
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1・「関節リウマチ」とは |
定 義 |
☆からだの多くの関節に炎症が起こり、関節が腫れて痛む病気です。
☆長期間にわたって進行すると関節の変形と機能障害が起きます。 |
病 因 |
☆自己免疫疾患です。なんらかの原因で免疫に異常が起こると、からだの中の
大切な成分を異物とみなして抗体をつくってしまい、自分自身を攻撃する。 |
発症傾向 |
☆人口の0.4〜0.5%、30歳以上の1%(70〜100万人)にあたる人がこの病気に
かかっています。
☆患者は、男性より女性に多く認められます。(約3倍)
☆30歳代から50歳代で発症する人が多く認められます。
☆15歳以下で発症したときは、若年性関節リウマチと呼ばれます。 |
活動性 |
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症 状 |
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関節外症状・合併症
1・結節 2・貧血 3・リウマチ肺 4・腎アミロイドーシス 5・骨粗鬆症 |
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2・診断 |
ACR分類基準(1987年) |
・ |
1)1時間以上続く朝のこわばり |
2)3箇所以上の関節の腫れ |
3)手の関節(手関節・中手指部関節
近位指節関節)の腫れ |
4)対称性の関節の腫れ |
5)リウマトイド結節 |
6)血清RF陽性 |
7)エックス線写真の異常所見 |
・ |
7項目中4項目以上
(1)から(4)までは6週間以上 |
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日本リウマチ学会
早期RA診断基準(1994年) |
・ |
1)3関節以上の圧痛
または他動関節痛 |
2)2関節以上の腫脹 |
3)朝のこわばり |
4)リウマトイド結節 |
5)血沈20o以上の高値
またはCRP陽性 |
6)RF陽性 |
・ |
6項目中3項目以上 |
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厚労省研究班 江口ら
早期RA診断基準案(2005年) |
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1)坑CCP抗体またはRF 2点 |
2)対称性手・指滑膜炎(MRI) 1点 |
3)骨ビラン(MRI) 2点 |
・ |
3点以上 |
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一般的にはACRの診断基準が用いられます。
しかし、このACR診断基準は早期リウマチでは、診断がつかないことも多くあり、
日本リウマチ学会早期RA診断基準、厚労省研究班早期RA診断基準が有効です。
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3・リウマチ治療を支える4本柱 |
薬物療法 |
非ステロイド性鎮痛消炎剤
副腎皮質ステロイド剤
坑リウマチ剤(免疫調整剤、免疫抑制剤)
生物学的製剤
その他 |
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手術療法 |
滑膜切除術
関節固定術、関節形成術
人工関節置換術 |
基礎療法 |
教 育 |
(患者・家族・社会) |
安 静 |
(関節・全身・精神的) |
保 温 |
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訓練・体操 |
体操 |
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リハビリ |
理学療法→運動療法・温熱療法・装具療法
作業療法→生活の質向上(QOL)を目的とし
日常生活動作(ADL)自立の訓練 |
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4・最新治療(生物学的製剤) |
生物学的製剤 |
最新のバイオテクノロジー技術を駆使して開発された新しい薬、生物が
産生した蛋白質を利用して作られています。関節リウマチの炎症や痛み・
腫れ、骨や軟骨などの関節破壊を引き起こす原因となる物質を抑える
ことにより、効果を発揮します。
生物学的製剤の登場により、関節リウマチの治療は大きく進歩しました。
構造の違いから抗体製剤と受容体製剤に分けられます。これまでの
DMARD(坑リウマチ薬)に比べ、生物学的製剤には非常に高い炎症抑制
作用があり、投与中は特に肺炎や結核などの感染症に注意が必要で
す。治療を開始するにあたっては、その必要性、効果、費用に関して
医師と十分に相談することが大切です。 |
種類・用法 |
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種 類 |
レミケード |
エンブレル |
ヒュミラ |
アクテムラ |
用 法 |
静注点滴 |
皮下注 |
皮下注 |
静注点滴 |
1回/0・2・6・8週毎 |
2回/週 |
1回/2週 |
1回/4週 |
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治療成績 |
EULAR(欧州リウマチ学会)改善基準*(DAS28-4ESR**)の推移
good response(良好〔寛解を含む〕)
moderate response(改善)
no response(無反応)
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副作用 |
58例/13,894人
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問題点 |
副作用(感染症・投与時の反応・呼吸器障害、肝機能異常等)
薬剤が高価 |
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生物学的製剤処方症例数 平成21年9月現在 単位:人 |
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レミレード |
エンブレル |
ヒュミラ・ |
アクテムラ |
全 国 |
38,403 |
32,000 |
5,511 |
7,659 |
愛 知 |
1,655 |
2,100 |
308 |
400 |
西三河 |
373 |
340 |
51 |
80 |
当 院 |
9 |
23 |
7 |
1 |
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5・今後の治療 |
用法 |
一般名 |
商品名 |
作用機序 |
静注点滴 |
アバタセプト |
オレンシア |
T細胞抑制 |
皮下注射 |
セルトリズマブ ペゴル |
シムジア |
坑サイトカイン剤 |
皮下注射 |
ゴリムマブ |
シンポニ |
坑サイトカイン剤 |
静注点滴 |
オクレリズマブ |
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B細胞抑制 |
静注点滴 |
リツキシマブ |
リツキサン |
B細胞抑制 |
皮下注射 |
アナキンラ |
キネレット |
坑サイトカイン剤 |
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